スウェーデンの少子化対策



スウェーデンでは出産期の女性の労働力率が84.3%
日本の66.6%と比べて高いにもかかわらず
出生率も1.65と、日本の1.32と比べて高い水準にあります。


まずスウェーデンの少子化対策の特徴としては
1.充実した育児休業制度と保育サービス 
2.高負担ではあるが、手厚い保障と公的サービス があげられます。

○ 充実した育児休業制度
 ・“両親保険”
   休業直前の8割の所得を390労働日(=毎日休業したとして
   期間は1年半に相当)にわたり保障されます。
 ・“スピードプレミアム”
   2年半以内に次の子を産むと、先の子の出産の休業直前の所得の
   8割が、育児休業中に再び保障されます。

○ 子供を出産した7割以上の女性が1年以上の育児休業を取得しています。

○ 勤務時間短縮制度
   少ない残業(ほとんどが所定内労働時間)、短い通勤時間(日本の
   平均の約半分)、育児休業制度などによる時間短縮労働などにより
   男女ともほとんどが午後6時前に帰宅しています。

○ サムボ
  スウェーデンには“サムボ”と呼ばれる“事実婚・同棲制度”が
  あります。いわば「結婚の試行期間」として普及しており
  法律婚カップルの実に9割がサムボを経て結婚しています。
  ※サムボ
   登録している住所を同じくし、継続して共同生活を営み性的関係を
   もつカップルのこと。サムボカップルの子と、法律婚カップルの子
   とで法律上の差別はなく、財産分与や養育権等も規定されている。


両親保険や児童手当等家族政策に係る財政支出は対GDP比3.31%
非常に高い数字になっています。

イギリスの少子化対策

イギリスでは子育てにお金がほとんどかかりません。
出産費用は無料、公立学校の学費も、医療費も無料です。
処方箋がいる薬も無料です。
子供がいる家族には税金の返還(毎月)もあります。

これは"Child Trust Fund"とよばれる制度で、子供が生まれると
自動的に250ポンド(日本円で約5万円)の小切手が政府から送られ
全ての人にお金が支払われるのです。
(ただし18歳になるまで下ろすことはできません)
これもイギリスの少子化対策の一環です。

他には、17.5%の消費税も子供服にはかかりません。
日本のように塾通いも多くありませんから、教育費も多くありません。
シングルマザーも厚遇され、家も格安で政府から支給されます。

問題としては、保育園に公的なものがないため、平均して
月550ポンド(11万円)以上の保育料がかかります。しかし最近になって仕事を
続けたい母親への支援も始まり、3歳から保育料の一部を政府が負担することに
なりました。
(4歳から小学校準備コース、5歳が1年生なので事実上4歳から学費は無料)

韓国の少子化対策



少子化対策が先進諸国の大きな課題になる中、韓国では女性1人が産む子供の数を示す合計特殊出生率が1.08(2,005年)と世界最低水準に落ち込みました。

これは、日本の合計特殊出生率1.25と比べても大幅に低く、「他の先進国の8倍速」(韓国統計庁)のスピードで少子化が進んでいます。

危機感を強めた韓国政府は「女性家族省」という独立の省庁をつくるなど対策を進めています。

共通する要因がある日韓は共同の意識調査や人事交流を計画し、連携して少子化克服の道を模索する動きも本格化してきました。

朝鮮戦争後に出生数が急増した韓国は、1,960年代に「3・3・35運動(3年ごとに子供は3人、35歳までに)」などの人口抑制策を開始しました。

これにより、出生率は1,970年の4.5から1,980年に2.8に減少しました。

その後も少子化政策が進められましたが、1,997年の通貨・金融危機で雇用不安が起こり、晩婚化・未婚化が進んで少子化が加速しました。

人口抑制策は1,990年代に終止符が打たれましたが、2,002年の出生率は1.17にまで落ち込んでしまいました。

危機感を強めた政府は大統領直轄の委員会を設置し、2,005年に「女性家族省」を新設しました。

2,006年7月には初の少子高齢化総合対策「セロマジプラン」をまとめ、出生率を2,020年までに1.6に回復させる目標や、今後5年間で少子化対策に19兆ウォン(約2兆3千億円)を投入する方針を打ち出し、来年度は一般会計の3%近い4兆ウォンを投入する予定です。

また政府は「企業の子育て支援を誘導しよう」と、法律で一定規模の事業所に企業内託児所の設置か子育て支援金の支給を義務づけています。今後は条件を満たせば税制面で優遇される制度も導入する予定です。

日韓両国の少子化は、晩婚化や子育て・仕事の両立支援の不足、男性の育児参加が進まないなど、共通する要因も少なくありません。

「少子化対策は欧州を手本にすることが多いが、東アジアの文化のなかで効果があるかは疑問。両国で連携し、独自の対策をたてる必要がある。」との意見もあり、政府間での活発な人事交流、情報交換が望まれます。

ドイツの少子化対策



日本やイタリアと同様に超少子化国とされるドイツでは、第二次世界大戦後のベビーブームを経て、1,996年から1,973年にかけて、合計特殊出生率が著しく低下し、1,995年には1.25まで落ち込みました。

15歳以下の人口割合をみても、1,970年には2割を超えましたが、2,002年には15.4%となっており、ドイツ連邦政府も少子高齢化の進展を深刻な問題と捉えています。
出生率の低下による労働力人口の減少が続くと、国力の強化は望めないと考えられています。

少子化の要因として女性の社会進出の進展が度々挙げられますが、ドイツでも女性(15〜64歳)の労働力率は1,982年に52.1%、1,992年に60.8%、2,002年に64.4%と、次第に上昇しています。

これに伴い、仕事と子育ての両立支援への取組みも進められましたが、それは出産・育児休暇を充実させる一方、保育サービスの立ち遅れが大きな問題となっています。

その背景には「子育ては、母親が自宅で行うべきもの」という根強い社会通念が存在し、両立支援策も女性のためと位置付けられる傾向が強いため、こうした考えが、育児・家事負担の女性への偏りを強めてしまったのです。

最近になってドイツ政府は、男女に中立的な制度の普及に取り組んでおり、そこには「ドイツの国力強化のためには、家族に優しい環境が必須である」という政府の考えがあります。

「女性・男性共に、生活と仕事の両立が可能な環境」=「ワーク・ライフ・バランス(注)」の実現は、国全体の力を強める可能性をもつというのが、政府の見解となっています。

こうした目的のために取られている施策として
(1)企業文化の改革(家族に優しい組織、労働時間、人材育成)
(2)女性の社会進出
(3)家族支援のためのサービス 等があげられます。

この中でも、(1)企業文化の改革 は特に重要視されており、企業の文化を変えていくにはまず意識改革が必要であるということから「家族に優しい組織とはいかなるものか」ということに関する情報の提供、人事系役員向けの専門セミナーの開催、労働時間や人材育成に関する情報の提供等を積極的に行っています。

少子化の進展を深刻に捉える政府は、「ドイツはファミリー・フレンドリーになる」というキャッチフレーズのもと、2,005年1月【子育て支援法】を制定し、2,010年を目標に3歳以下の子供を対象とした保育サービス(保育所・託児所・保育ママ等)をEUレベルにまで引き上げることを目的としています。

企業に対しても、子供がいることで従業員が直面する様々な問題に対処できるように、柔軟かつ多様な働き方の導入を促進しています。


ワーク・ライフ・バランス(注)・・・
1,990年代からアメリカ合衆国で始まった取り組みで、一般的に「仕事と私生活を両立させること」をいう。
欧米諸国での取り組みでは「子育て支援」の枠を越え、全従業員が仕事と私生活のバランスを保ち、より充実した社会生活を送れるよう支援するための制度策定および運用が積極的に行われている。

フランスの少子化対策



フランスでは、1,994年に合計特殊出生率が1.65にまで落ち込み
早急に取り組んだ結果、1,994年を底として順調に回復し
2,003年には合計特殊出生率は1.89となりました。


原則として、2人以上の子供を持つ家庭には所得制限無しで諸手当が
配布されるシステムになっており、何と20歳までそれらが継続して支払われ
さらに年齢による加算が行なわれています。

○妊娠・出産手当(妊娠5ヶ月〜出産)
  妊娠・出産にかかる全ての費用について保険が適用される。
○乳幼児手当(妊娠5ヶ月〜生後3歳)
  子供1人当たり約23,000円/月が支給される。
○家族手当
 ・子供が2人で約16,000円/月、1人増える毎に約20,600円/月が
  追加され支給される。
 ・子供が成長していくにつれ、支給額が加算される。
  11〜16歳 約4,500円/月、16歳以上 約8,000円/月 加算。 
 ・子供が3人以上の場合は1人毎に、約15,000円/月 支給される。
 ・新学期手当(小学生以上)が、約29,000円/年 支給される。
 ・産後の母親の運動療法保険が全額支給される。
 ・双子もしくは子ども3人以上いる場合などは家事を代行してくれる人
  (ベビーシッター)を格安で派遣(1〜2度/週)してくれる。
 ・片親手当 子ども1人で約76,000円,1人増える毎に約19,000円/月
 ・不妊治療……人工生殖にも保険が適用される。(4回まで)

さらに、これらの諸手当が手厚いだけでなく、教育費も格段に安く
基本的な学費はほとんどタダ同然となっています。
それも幼稚園ですら義務教育となっており、大学にいたるまで
必要なお金は給食費やクラブ活動費などくらいごくわずかです。
教科書も貸与となっていますので無料です。


日本との根本的な違いとして、いわゆる「家族手当」というものが
企業からではなく、国から支給されていることでしょう。

また教育費、教育関連費も両国間の差は大変大きくなっています。
大学の授業料だけを比較しても、日本はフランスの3倍近いという
データもあり、それに「家族手当」などの金額を比べてみれば・・・
その差はとてつもなく大きなものでしょう。

フランスでは合計特殊出生率が1.65で“危機”と感じ
素早く、また具体的な行動を起こしています。
日本では1.29になって、やっと重い腰を上げた程度です。

政府・政治家の早急な対応が望まれます。
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■諸外国における年齢別人口の割合■
(諸外国は2,012年推計値)

国名年齢別・人口割合(%)
0-14歳15-64歳65歳以上
日本(2.014年推計値)12.861.326.0
韓国16.272.711.1
中国18.173.58.4
イタリア14.065.720.3
スペイン14.968.017.1
ドイツ13.465.820.8
ロシア14.972.013.1
ポーランド15.071.513.5
スウェーデン16.565.318.2
イギリス17.665.9116.6
フランス18.464.816.8
カナダ16.569.414.2
アメリカ19.867.113.1
アルゼンチン24.964.510.6
インド30.264.85.1
南アフリカ29.765.15.2

■人口動態総覧(率)の国際比較■
国名 出生率 死亡率 婚姻率 離婚率     合計特殊
出生率
(人口千対)
日本 8.3 9.9 5.2 1.87 1.39
韓国 9.4 5.1 6.6 2.3 1.24
シンガポール 9.3 4.4 6.1 1.9 1.15
アメリカ *13.0 *7.9 *6.8 *3.4 *1.93
フランス *12.6 *8.6 *3.7 *2.04 *2.0
ドイツ *8.3 *10.5 *4.7 *2.27 1.38
イタリア *9.3 *9.7 *3.6 *0.9 1.41
スウェーデン 12.3 9.6 5.4 2.52 1.94
イギリス *12.5 *9.0 *5.1 *2.05 1.96
・*印は暫定値
・日本・・・人口動態統計月報年計(概数)の概況
・韓国・・・韓国統計庁資料
・シンガポール・・・シンガポール統計局資料
・アメリカ・・・NCHS,National Vital Statistics Reports
・フランス・・・フランス国立統計経済研究所資料
・フランスを除くヨーロッパの各国・・・UN,DemographicYearbook2006-2010

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